BPOサービス3社の統合によりスタートしたパーソルワークスデザイン(PWD)は、誕生から3年を経た2021年10月、ミッション・バリューを刷新。PWDが新たな一歩を踏み出す今、全社を率いる代表取締役社長・平林 由義にインタビューしました。前編では、ミッション・バリュー改定に込める想いや今後中長期で目指していく事業の方向性について、平林が語ります。
5年先、10年先を見据え、全社でベクトルを合わせていくために

新たに策定したミッション・バリューの位置づけや、刷新の狙いについて教えてください。
そもそもミッション・バリューは、あらゆる企業活動の拠り所となり、会社にとっては憲法のような存在です。私はよく自社のことを「パーソルワークスデザイン君」と擬人化して話すのですが、皆さんが一人ひとり違った性格を持ち、それぞれに目標や理想があるように、パーソルワークスデザイン君にも法の上の人(法人)としての個性があります。ミッション・バリューはパーソルワークスデザイン君の今後のあるべき姿を明らかにし、そこに向けて大きな舵を切っていくために欠かせないものです。私自身、今回の新ミッション・バリュー策定を非常に重視し、力を注いできました。
検討自体は2020年から始めていましたが、コロナ禍の影響が広がって事業環境が揺れ動く中、全社でベクトルを合わせていくことが今まで以上に重要となり、議論を加速させて2021年10月の策定にこぎつけました。5年先、10年先、さらに先を見据えて大きな方向感を打ち立てたのが今回のミッション・バリューです。
またPWDは、日本アイデックス、ハウコム、テンプスタッフ・ライフサポート、そしてパーソルテンプスタッフのRPO部門という、実質4社の文化が集まって誕生した会社です。異なる会社出身の社員が気持ちを合わせてより良いサービスを生み出していくために、文化の融合を更に進めるという狙いも新ミッション・バリューにはありました。
はたらく個人にフォーカスしたミッション・バリューで、「ワクワクワーク」を追求

ミッションに「ワクワクワークのあふれる社会へ」を掲げた背景には、どのような想いがありますか?
PWDは現在、従来のBPOサービスを超えた「サービスインテグレーター」への転身を決め、歩み始めています。これは、今までアウトソーサーとして培ってきた知見やノウハウを組み合わせ、お客様の課題を解決する新たなサービスを自社開発していくものです。もともとPWDは、水道・ガス・電気などのインフラと同じように、お客様のビジネスに必須のサービスを常に確実に提供していくという、ある意味で保守的な考え方が強い会社でした。しかし新たな挑戦をしようとするにはそれだけでは不十分だと感じました。それにはパーソルワークスデザイン君の頭を切り替える必要があったのです。
サービスインテグレーターになるためにパーソルワークスデザイン君に必要なのは、もっと能動的にワクワクしながら明るい未来を目指すこと。そして、パーソルワークスデザイン君を形成する細胞の一つひとつは、当社ではたらく社員一人ひとりです。社員が皆ワクワクし、活性化されていないとパーソルワークスデザイン君は当然ワクワクできません。この考え方はグループビジョンの「はたらいて、笑おう。」にも通じていますし、バリューの「素直に、自分らしく、誇りを持って、楽しむ。夢中になる。」にも明確に表れています。
新ミッション・バリューは、はたらく個々人に焦点を当てた印象が強いものとなっていますね。
そうですね。個人へのフォーカスは当社の特徴で、一般的に顧客志向、社会志向と呼ばれるミッション・バリューが多い中ではめずらしいといえるかもしれません。パーソルワークスデザイン君が生き生きと輝き、ユニークな行動を起こしていく原動力になるのは、当社に関わるすべての人のワクワクワークです。そこには社員はもちろん、パートナー会社の方々も含んでいます。そしてそのワクワクが、PWDを超えて広く伝播し、お客様や社会に染み出していってほしい。こうした世界観のもと「ワクワクワークのあふれる社会へ」を定めています。
サービスインテグレーターとして、より高い次元でお客様の課題を解決する

あらためて、新ミッション・バリューのもとで目指すサービスインテグレーターの姿を聞かせてください。
私たちには、統合前から多様なお客様のビジネスを支えてきた実績があり、BPOの基礎となるプロセスノウハウが豊富にあります。それらを土台にお客様に潜在化しているニーズを読み解き、マーケットインの視点で新たなサービスを創造していきます。
例えば、採用代行事業とヘルスケア事業を合流させた人事ソリューション本部の設置もその流れの中にあります。人材を集める採用代行、集めた人材を支え続けるヘルスケア、どちらも人事部向けの事業であり、お客様のニーズに対して社内でバラバラに持っていたものを組み合わせ、「人事課題に応えるサービスは、すべてPWDのこの部署に揃う」というようにしました。
また現在、当社が受託する公共事業の運営も同様です。コールセンターと事務処理アウトソーシングで培った知見を組み合わせ、属人化させない仕組みを自ら生み出し、今までにない高い生産性で膨大な数の問い合わせに対応しています。
これらは従来の「代行」サービスとは性質が異なり、サービス自体を「代替」していくものです。従来のアウトソーシング事業は価格競争に陥りがちで、品質を落とさずどこまで価格を落とせるかが問われてきました。そこから脱却し、新たな別のサービスや方法を生み出し、より高い次元でお客様の課題を解決していくのがサービスインテグレーターとして目指す姿です。
暗黙知を価値あるデータに変える「KCS」を強みに

今後への展望を聞かせてください。
PWDはナレッジセンタードサービス(KCS*)をビジネスに適応した日本で数少ない会社であり、そこに将来への大きなチャンスを見込んでいます。KCSの活用により、コールセンターやヘルプデスクではスタッフに知識がなくても、過去に集めた顧客体験データをもとに、問い合わせに迅速に対応できます。これは暗黙知を再利用可能なデータに変える仕組みであり、業務の生産性向上はもちろん、データそのものの販売ビジネスにもつながり得るものです。
例えば市民コンタクトセンターには、道路の状態やごみ収集など市民生活に関するあらゆる対応まで、日々ありとあらゆる大量の問い合わせが市民から寄せられます。それらをただの記録で終わらせず、検索・分析できるように構造化しながらどんどん蓄積していけば、築いたデータベースは将来的に他の市町村でも活用できるでしょう。市民からの問い合わせは全国どこでも共通するものが少なくないからです。
また、24時間365日人に頼ったコールセンターの運用は現実的ではなく、AIやチャットボットなどのデジタル活用が欠かせません。ここでも、コンピュータに的確な回答をさせるためのデータが鍵を握ります。
アウトソーサーとしてKCSのノウハウを持つのは当社ならではの強みです。各業界でさまざまなお客様に向き合い続けてきたPWDだからこそ幅広いデータを蓄積でき、サービスインテグレーターとしての新たな可能性が広がります。自ら主体的に仕事に向き合う社員一人ひとりの、そしてその集合体であるパーソルワークスデザイン君のワクワクワークを原動力に、より多くのお客様の役に立つサービス創出で、社会に貢献していきたいと考えています。
*米国の非営利団体サービスイノベーションコンソーシアムが提唱。米国で多くの企業に導入され、コールセンターやヘルプデスクの業務効率化に広く活用される。
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