CULTURE
2021.08.30

メンタルヘルス支援の常識を変える産学共同プロジェクト。アバターによる心理相談「KATAruru」開発の舞台裏。

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パーソルワークスデザイン(以下、PWD)は2021年6月、東京大学大学院教育学研究科の下山晴彦研究室(以下、下山研究室)とともに開発した、こころの健康 アバター支援サービス「KATAruru(かたるる)」の提供を開始。誰もが気軽に利用できるメンタルヘルス支援の実現に向け、試行錯誤を重ねた開発の舞台裏を4名の社員に聞きました。

※撮影時のみマスクを外しております。
上田 知子
人事ソリューション本部 サービス開発部2課 課長
上田 知子
2008年ハウコム(現・PWD)入社。プロジェクトマネージャーとしてチームをまとめ、「KATAruru」の開発を統括。
2008年ハウコム(現・PWD)入社。プロジェクトマネージャーとしてチームをまとめ、「KATAruru」の開発を統括。
竹ノ内 美那子
人事ソリューション本部 サービス開発部2課
竹ノ内 美那子
1996年日本アイデックス(現・PWD)入社。サービスの運用構築を担当。安定運用のための仕組化・手順化を担う。
1996年日本アイデックス(現・PWD)入社。サービスの運用構築を担当。安定運用のための仕組化・手順化を担う。
野崎 徹
人事ソリューション本部 サービス開発部2課
野崎 徹
1996年日本アイデックス(現・PWD)入社。システム開発担当。開発協力会社との窓口になるほか、自身も開発に携わるSE。
1996年日本アイデックス(現・PWD)入社。システム開発担当。開発協力会社との窓口になるほか、自身も開発に携わるSE。
小坂 智映
人事ソリューション本部 ヘルスケアソリューション部2課
小坂 智映
2020年新卒入社。公認心理師資格を取得しており、「KATAruru」の運用チームの一員として、心理師や相談者をサポートする。
2020年新卒入社。公認心理師資格を取得しており、「KATAruru」の運用チームの一員として、心理師や相談者をサポートする。

双方向でアバターを活用した、新しいサービスへの挑戦。

――「KATAruru」の特徴や、その開発の経緯について教えてください。

上田 アバターを使い、オンライン上で気軽に心理師に相談できるのが「KATAruru」です。PWDではヘルスケア事業を強化しており、従来の健康診断業務の実施代行や保健指導のサービスに加えて、2020年4月には健康プラットフォーム「MeUP(ミーアップ)」を立ち上げています。「KATAruru」はこれに続くもので、受託ではなくPWDが運営主体となった新たなソリューションとして、同年10月に開発に着手しました。その前段階では、アバターによる心理相談の効果を測る共同研究を、半年間にわたって下山研究室と取り組んでいます。

竹ノ内 研究からサービスの構想までは部内の別チームが担当していて、具体的な開発・運用構築から私たちが引き継いだ形です。アバターを使ったバーチャル上の心理相談というのは、他社にも例がなく、全く新しいものを生み出していくおもしろさを感じましたね。相談者や心理師の方々にとっていかに使いやすく、当社にとっても運用しやすいサービスとしていくか、その土台づくりに携わりました。

野崎 アバターはすでに社会的に認知された技術ではありますが、双方向でアバターを用いるというのが今回の大きな特徴です。心理師と相談者がお互いの顔情報をキャプチャして配信し合う、技術的にはかなり高度なものです。新しいサービスだけにシステムのあり方など予測がつかず、外部の開発協力会社の方とともに手探りでの開発になりました。

上田 最近、メンタルヘルスの課題は社会で広がっていますが、メンタル不全での休職となると、職場復帰には長い時間がかかります。そうなる前に手を打つソリューションで人事課題に応えたい、というのがこの分野に乗り出した背景にあります。アバターを活用すれば秘匿性が高まりますし、相談者と心理師がお互いに適度な距離感を取ることができます。また下山研究室側からは、公認心理師や臨床心理士の方々の新たな活躍の場を増やしたいという意向も受けていました。

小坂 実は私は、就職活動中に参加した東京大学のシンポジウムで「KATAruru」の構想を知り、それをきっかけにPWDに入社しました。私自身も公認心理師の資格を持っていますが、心理師の就職先は病院や学校が多く、すでに心身に不調を抱えた人へのアプローチが中心です。そうではない支援方法を模索したいと考えていた中、オンラインでの気軽な心理相談サービスという「KATAruru」のコンセプトに魅力を感じました。

異なる視点を受け入れ、産学でともにゴールを目指していく。

――開発段階でこだわった点、苦労した点はありますか?

竹ノ内 美那子

竹ノ内 予約システムのあり方や、サイト上の導線づくりにはいろいろ試行錯誤しました。30分間の「気軽に相談コース」と50分間の「本格的相談コース」という2つのコース設定も調整に調整を重ねた結果です。当初は、気軽に予約でき、短時間で自由に話せる前者のみを考えていたのですが、相談内容に応じて専門の心理師がつくことや、継続的な相談も想定して「本格的相談コース」を追加しました。

上田 その点は、下山研究室からのご意見を反映したものでしたね。サービス提供会社としては「気軽さ」にニーズがあると考えたものの、それだけを押し通そうとしても心理相談は成り立たないことを、専門的な見地からアドバイスいただきました。当社初となる産学共同プロジェクトでもあったので、立場の違いを踏まえながら、ときに異なる意見をいかにひとつのサービスに落とし込んでいくかは非常に重視しました。

小坂 通常の対面のカウンセリングでは事前の問診がとても大切で、それをもとに心理師をアサインするため、予約から実際のカウンセリングまでには日数がかかることもあります。しかし「KATAruru」の本来の趣旨を考えると、事前のプロセスが複雑になることで相談者が離れていくのは避けたいもの。予約方法をめぐっても、そうした異なる視点の落としどころを探るような形だったと思います。私は前年度まで心理学系の大学院にいたこともあり、PWDと下山研究室ができるだけお互いの考え方に理解を深められるよう、自分の立ち位置を意識しました。

野崎 システム担当としては、「世の中に山ほどあるスマホの機種・バージョン」への対策がひとつの挑戦でした。顔情報のキャプチャでは、目・鼻・口など個々の動きを点で捉えます。点を細かくすれば豊かな表情をリアルに伝えられますが、当然ながら負荷が増し、相談者が古いスマホを使っていれば動きません。そこをどうカバーしていくかには苦労しましたし、オンラインサービスである以上、今後も継続的な対応が必要です。

従来の「カウンセリング」の概念を変え、よりポジティブな利用を促す。

――「KATAruru」のサービス展開にあたり、現在取り組むべき課題とは?

上田 知子

上田 「KATAruru」は企業人事を直接のお客様としながらも、人事が介入しない従業員向けサービスであるだけに、「どう売っていくか」は難しいところです。人事担当者はどんなカテゴリで何件相談があったかなどの大まかな情報は得られても、相談者や相談内容は特定できないため具体的な対策につなげられず、それがサービス導入の壁になってしまいます。「KATAruru」のコンセプトを大事にしつつも、売り方・伝え方をブラッシュアップしていかなければと思っています。

竹ノ内 企業人事には「健康経営のためのメンタルケア」という訴求が受け入れられやすい一方、相談者には友達や家族にちょっとグチをいうような気軽さでサービスを利用してもらいたい。メンタルケアを強く打ち出すと相談しにくく感じる人は多く、どうバランスをとってアピールしていくかが問われますね。

小坂 諸外国では、心身の健康維持のためにカウンセラーを利用するのが当たり前という意識があるのですが、日本ではまだ「カウンセリングはメンタルに問題がある人向け」という意識が根強くあります。一朝一夕では変わらなくても、その障壁を取っていく必要があるのでしょう。

上田 まさにその通りで、私たちとしてはもっとポジティブに「KATAruru」を活用してもらいたいという思いがあります。そのための施策のひとつが、2021年9月に公開予定のオプションサービス「セルフモニタリングシステム」です。これは、定期的なアンケートとそのフィードバックを通して自分の心身の状態に気づき、自発的にケアする「セルフデザイン力」を育てていくもの。不調を感じる前に「KATAruru」を利用し、自分をプラスの状態に持っていってほしいという発想でスタートしています。

野崎 セルフモニタリングシステムは「KATAruru」の入り口部分を担うオプションサービスといえます。こうしたオプション、選択肢はどんどん増やしていけるといいですね。ひとつの手段がある人に当てはまっても、別の人でうまくいくとは限りません。いろいろな人が「KATAruru」を自身のケアや成長に役立つチャネルとしてご利用いただけるよう、ITを通じて提供していきたいです。

多様なヘルスケアの課題に応え、グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」の実現へ。 

――ヘルスケア領域において、今後どのようなサービスを提供していきたいですか?

竹ノ内 今は目の前のことで精一杯! セルフモニタリングシステムの構築も真っ只中で、「KATAruru」がより多くのお客様に選ばれるサービスとなるよう全力を尽くしたいです。下山先生をはじめ下山研究室の皆さんからも「すばらしいサービスになった」と評価していただけたことが、がんばり続ける励みになっています。

野崎 システム的にも、「KATAruru」はようやくスタート地点に立ったばかりです。ヘルスケアは人が担うもので、システムはあくまで手段ですが、その手段をいかに使いやすくしていくかが問われているのだと思います。今後5Gが普及すれば、通信速度やスマホの性能が全体的に上がってくるでしょう。それに合わせて、できることの幅を広げていきたいですね。

小坂 グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」の実現に向けて、「KATAruru」以外でもPWDがヘルスケア事業で取り組めることはまだまだあると感じています。個人的には、社会で女性活躍が進む中、はたらく女性の健康を支えるようなサービス開発に携わってみたいです。

上田 事業推進の上で大切にしたいのが「平等公平」の観点です。一般にヘルスケアというと、課題のある人やゆとりのある人がお金をかけて行うイメージがあります。けれど、ある特定層をケアするソリューションだけでは今の世の中には不十分。だれもが自分らしく過ごすために、ヘルスケア領域の解決パートナーとなり全体を底上げしていけるようなサービスを多く生み出していければと思っています。

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